駄仙遊撃録 


 巻之参 迷鳥図南

 TRA.が発行しているTRPG央華封神のリプレイ本、「駄仙遊撃録」巻之参 迷鳥図南の冒頭部分です。

GMそれでは始めましょう。前回のシナリオから、3ヶ月が経過しました。
靄加最初の話からすると12ヶ月…ということは、一年ほど経過するわけですが。季節はいつ頃?春先?
GM央華の一年は13ヶ月だから、気候としては春というよりその一歩手前って感じになるかな。そろそろ春になる寸前の、一年で一番寒い時期だ。
靄加春は名のみの風の寒さや。そんな時に、我々は寒空の下をうろついていなければならないわけだな。
針山まあ、洞府に見捨てられてしまった身ですからね。
靄加見捨てられたのは君だけだろう。私はばあさんに捨てられた覚えはないぞ。
針山誰かさんは物覚えがよくないから覚えてないだけでしょう、それが誰とは言いませんが。
靄加さて今回は前回より二人プレイヤーが多いわけだが。現状の確認からいってみようか。
GMひとまず、既に旅に出ているそっちの四人(靄加、乂孑、義徳、針山)は置いといて…曄舜から始めましょう。君はある日、師匠に呼ばれました。
曄舜おうよ。
靄加師匠はどんな人だっけ?
曄舜猫の変化の仙人です。デブデブの波斯猫。
靄加ハルシアというやつですな。おまけにすけべ親爺…なんだよね。
曄舜その通り。
乂孑プレイヤーとして親近感が…
GM湧くな、そんなもん。
靄加曄舜は師匠のセクハラから逃れるために小娘の姿を保っているという。でも15歳ってけっこう大人だと思うんだけどな。あの世界では、嫁に行っててもぜんぜんおかしくない歳だぞ。
艶紅きっと師匠は年増好みなんだ。
靄加なるほど。通だな。
GM何がじゃい。さて、その師匠なんですが…少し前に、とある偉そうな仙人が師匠の所にやって来まして。で、それから二週間ほど師匠は自分の部屋にこもりきりになっていたんですな。それが今日、やっと出てきて曄舜を呼びつけたわけです。
曄舜どうも、お久しぶりでございます。
GM
/師匠
「おお曄舜か。これからちょっとしたお使いを頼みたい」
曄舜はい。で、それはどんな?
GM
/師匠
「これをある場所まで届けてくるのだ」…と渡されたのが、玉手箱という感じの一つの匣。
曄舜何だろ。
GM開けたら婆さんになっちゃうかも。
乂孑いや…開けるときっと何年分か歳をとって、師匠好みの色っぽい姐ちゃんになるんだよ。(一同笑)
曄舜これは何でございましょう?と師匠に聞くよ。
GM
/師匠
「中に、大事な仙宝が入っているのだ」…で、ついでに曄舜はお手紙をひとつ渡されました。「これからお前に乗騎を貸してやろう。それに乗って、案内された場所の邑の長にこの手紙を渡しなさい。そうすれば後のことはわかるはずだから」
靄加つまり乗騎がちゃんと行き先を知っているわけか。
GM乗騎の種類は何にしようかな。いちおう変化術の師匠だけど他に手出ししててもおかしくないし、どこかで仙獣を拾ってくる場合もあるし…では、白鷺を貸してくれます。それに乗って、君はばっさばっさと洞府を旅立ちました。
GM…というところで、とりあえずストップ。今度は四人組の方に話を振ってみましょう。



針山今日も今日とて野宿の身。
GM冬ですね〜、寒いですね〜。
乂孑俺、長元坊の兀ちゃんを大きくして、羽根であっためてもらうからぬくぬくだもーん。
靄加羽毛などで暖められない寒さが心を苛んでいる。私と少年の間には冬よりももっと寒いものがあるのさ。
艶紅そこの四人、今どこで何やってんだ〜。
GM気候も寒いし、君たちは何となくふらふらと南へ向かって流れているところです。
艶紅そんな理由でいいの?
乂孑だって、あったかい所に行かないと蜥蜴の幺ちゃんが冬眠しちゃうもん。
靄加いくら南に行ったところで、誰かさんと一緒にいる限り私は寒さから解放されんと思うがな。
GMで、さらにその四人は置いといて、今度は艶紅。君はお師匠に呼ばれました。
艶紅あ、はいはい何でしょう。
GM
/師匠
「おお艶紅。一年ほど前に、お使いに行った先で一緒になった道士たちのことを覚えているか?」
艶紅ああ、確かにそのような事もあったような気がいたします。
GM
/師匠
「あの連中が、今から三ヶ月ほど前に修行の旅に出掛けたらしい。実はお前もそれに同行させる気だったのだが、三ヶ月間ずっと忘れておりましてのう」
艶紅あ、あのお師匠様…大丈夫ですか?つまりまさか、今から走って追いかけろとおっしゃるんで?(一同笑)
GM
/師匠
「まあ、端的に言えばそういう訳じゃ」
乂孑ねえ、ここの師匠もボケてるの?
靄加きっとうちのばあさまのが伝染したのだ。あれはうつるからな。
GM
/師匠
「もっとも、私も多少悪かったと反省しておるので走って追いつけとは言わん。乗騎を貸してやるのでそれに乗って合流するがよい。行き先はそやつがわかっておる」
艶紅で、一緒に旅をすればよろしいのですね。
GM
/師匠
「そうだ。達者でな」
艶紅ではお師匠と姉弟子さまにおいとまを告げます。
GM君の場合の仙獣は何にしようかな…仙鹿でいいや。あれ、翼が生えてるんだよね。それに乗って、ばっさばっさと洞府を後にします。
艶紅長々と御世話になりました〜。
靄加もう帰ってこないような言い方だな。
艶紅うう、上空は風がひときわ冷たい。
GMさてしばらく飛んでゆきますと…やがて四人の仙人がとぼとぼと歩いているのが下方に見えてきました。
艶紅ああ、いたいた。
靄加ん、なんだ?ハネのついたトナカイが飛んでいる。
針山師兄。あれは、仙鹿というものです。
靄加ほほう。私はてっきり、あの噂に聞く「12月24日の夜に現れて家々にガラクタをばらまいていく赤い服の妖怪じじい」が我々の元にも訪れたかと思った。
義徳おお、そのような方がいらっしゃるとは。
針山義徳さん、騙されてはいけません。だいたい今何月だと思ってるんです。
艶紅とかやってる所へ、「こんにちわ〜」と降りていきます。
GM君を降ろすと仙鹿はとっとと帰ってしまいました。
艶紅どうもお久しぶりです、覚えておいででしょうか。
乂孑あ、料理のうまい姐ちゃんだ。
靄加あなたがあの噂に聞く、赤い服の老人の孫娘でしたか。初めまして、どうぞよろしく。
艶紅??…何の話?(笑)ひょっとしてこれは、忘れられているのでは…
GMこの人、物覚えが悪いのが取り柄だから。
艶紅実は、あなたと私は一年前に一緒に冒険をしたことがあるのです。
靄加ほう、そりゃ奇遇。ぜんぜん知らなかった。
艶紅というわけで、私も修行の旅に同行しろとお師匠の命令を受けましたのでご一緒させていただきます。カイロ代わりの「保温玉」もありますし。
乂孑わーい、一緒に料理作ろう。
義徳料理のできる方がいてくださるとは、なんと心強い。今までは散々でしたからなあ。
靄加ふっ、義徳君は私の作る料理にずいぶん感動してくれたらしいな。
GM今までどんなんだったんだ、こいつらの食生活。
針山そりゃもう持ちまわりで、誰が作っても悲惨な状態。
靄加というわけで艶紅さん、あなたを本日づけでこの隊の料理長官に任命します。
艶紅まあ、そんな大役をいただけるなんて。
靄加だって他につとまる奴いないし。
針山偉そうな割に小市民な称号だな。
艶紅すべて快温竈におまかせを。



GMというわけで五人になり、君らはてくてくと歩いて行くわけです。
艶紅ところでどこへ向かっているのですか?
靄加何となく南へ。
針山あてもなく南へ。
曄舜渡り鳥は寒くなると南へ向かいます(笑)
靄加生き物地球紀行。つまり我々の頭の中には、動物なみの本能しか入っていないというわけだな。
針山いい事ではありませんか。無為自然に徹するのが仙人の正しい道。
艶紅それなら、わたくしの保温玉でそこらじゅうぬくぬくにできますが。
靄加だから、寒いのは気温のせいじゃないんだってば!
艶紅わかりました。では燕さんと一緒に南へ旅立ちましょう。
靄加うむ。心の楽園を探しにゆくのだ。
乂孑え、ツバメ?(↑不埒なことを考えているらしい)
艶紅ええ。燕はおいしいスープの素になります。
靄加ふふふ。それなら私は艶紅さんに対し、なにげに少年を推薦したいところだがな。
GM
&乂孑
えー!?
靄加いや、だって…ねえ。少年の歳なら、央華ではけっこうお年頃ですよ。彼女と外見年齢は二つしか違わんし。
曄舜あ、そういう意味か。スープの素として少年を推薦したのかと思った。
GM少年煮たら、まずいダシが取れそう。
靄加いやいや、そっちじゃない方。くっくっく。…てなわけで艶紅さん、少年は嫌?
艶紅うーん、あの人はちょっと煮込みに時間がかかりすぎるんじゃないかと。
靄加だからスープの具に使うんじゃないって。今なら3割引きで、おまけにバナナ一山もつけよう!どうだ!?
艶紅あなたが自分で囲ったらどうです。要は、針山さんの売り先を探しているだけなのでは?
靄加ちょっとよそに押しつけようかと思ってな。求む、里親!拾ってください、名前は針山です。
針山…なんてそっちでタコスケな事をやってるのはほっといて、私は羅盤でも読んでいましょう。
GMそうこうしながら、君たちは南へだらだら進む。
艶紅結局、特にあてがあるわけじゃないんですね。
GMまあ始めから目的のある旅でもないしね。
靄加大道の導きのままに。と言えば聞こえはいいが、単に何も考えてないだけとも言える。
乂孑北風に背を押されながら。
GMさて、そのうちに…だんだん辺りが暖かくなってきました。
艶紅あら?
GM進むにつれてどんどん暖かくなっていきます。周囲の木々も、緑が豊かになってきました。歩いた距離からすると、不自然なくらい気温が上昇している感じだ。
義徳このような場所があるとは。
GMそこで、君たちは川に行きあたりました。前方には邑が見えています。
艶紅おや、せっかくだから立ち寄ってみましょうか。
靄加うむ。久しく人間に足を踏み入れていない気がする。
乂孑普通の会話が聞きたいから(笑)、あっちに行ってみようよ。
GMみんなトゲのない会話に飢えているねえ。
乂孑このパーティ、どう考えてもガキの情操教育に悪いよ。(↑実際には60近いオヤジのくせに…)
一同というわけで、行きましょう。
GM川に近づいていきますと、橋がかかってまして。そのあたりの畑や木々には、たわわに作物が実っております。
靄加何しろこの温度だからな。なかなか豊かそうな邑だと思いながら歩いていこう。
GMその橋を渡りかけたところで、君たちに声をかけてくる者がいます。しかも…橋の下から。
艶紅あら?覗きこんでみよう。
靄加「拾ってください、名前は乂孑です」
乂孑だー、それから離れんかい!
GM下の河を見てみると、でかい河魚が水面から頭を出して話しかけています。「もしもし、もしもし」
乂孑ねえねえ、君おいしい?
靄加
&艶紅
ていうのは黙らせといて…
乂孑ひー。じたばた。
艶紅まあ、しゃべる河魚とは珍しい。
GM
/河魚
「そこな方々は、仙人様とお見うけしましたが」
針山(憮然と)お見うけせんでいい。
靄加それがわかるとは、おぬしただ者ではないな。
GM
/河魚
「私はすぐそこのほこらで祀られている、河伯(※河の神さまのこと)でございます。あなた方は、仙人様ですね?」
乂孑いちおうそうだよー。
艶紅まだまだ未熟者の身ですが。
靄加そういうのは仙人ではなく道士というのだ。
GM
/河伯
「実はお願いしたいことがございまして」
義徳何でしょうか。
靄加まあ、聞くだけ聞いてみよう。
艶紅その前に我々、土手に降りられませんか?
針山それよりほこらまで行った方がよろしいのでは。
GMうん、行ってもいいよ。ほこらはすぐ近くにある。



艶紅それではお邪魔させていただきます。
GMと言っても、河べりに祭壇がちょこっと作ってある程度の小さいほこらだから、中に入ったりはできないけどね。祭壇の上には果物なんかが供えてあります。
乂孑ぱくぱく。ぱくぱく。
針山乂孑がかぶりついた瞬間に、「飛斬」の術でどつきを入れてやろう。
乂孑(針山に)兄ちゃんも食べるー?これおいしいよ。
GM
/河伯
「まあまあ、遠慮なさらずにどうぞ」
艶紅果物、傷んでたりしませんか?
GM新鮮です。「私は魚なので果物は食えんですから、(一同爆笑)どうぞ好きなだけ召し上がってください」
靄加なんか夢中で食ってる奴がいるけどそれはほっといて、お話というのを伺いましょう。…どーせ他にする事ないし、というのは内心の本音。
艶紅河伯様はわたくし達にどういったご用が?
GM
/河伯
「実は、近頃この付近の気の流れが…活発になってきているのです」
艶紅おや、言われてみれば確かに。
靄加それは結構な事ではないのか?滞っているとかいうのは事件としてよくあるが。
GM
/河伯
「あまり長期に渡って活発な状態が続くと、気の枯渇を招く恐れもあるわけです。しかもその現象と共にここ三ヶ月ばかり気温が突然高くなりまして、それも奇妙なのです。しかし私はこの体ゆえ、水から上がることができません」(一同笑)
靄加シーラカンスに進化しなさい。
GM両生類はちょっとツラいなあ。そういうことで、君たちは解決をお願いされるわけですが。
艶紅わかりました、そういう事でしたら。
靄加なるほど、それなら我々がちょうど折よくここを通りかかったのもきっと…
GM
&靄加
「大道のお導きでしょう」(笑)
靄加うーん、つくづく央華っていい世界だ。
艶紅というわけでわたくしは手助けをさせていただきます。己が信ずる善をなさねばならないのです。他の皆さんは?
義徳そうですな。
乂孑俺、果物食っちゃったから断れない。
靄加私は別に異論はない。ヒマだし、他にする事ないし。
針山本来なら「ひそやかに」導かねばならんところですが、相手が河伯様とあれば私ごときが導く相手でもないでしょうし…てなわけでこの場合は戒律に該当しないとみなして、ひそやかでなく普通に承諾してあげましょう。
靄加ここで少年が一人だけ依頼から抜けてくれれば、私だけ徳が上がってさらに君と実力の差が開くかと思ったのに残念だ。
乂孑そういう事考えてると、徳が減るんじゃないのか?
針山そして裏成功で派手に反動くらうんですな。御愁傷様です。
靄加ふ、もしも邪仙となった暁には…少年よ、まっ先に君の首を狩りに行くのが私の夢なのだ。
針山大丈夫。あなたが邪仙になっている頃には私はもっと上級の邪仙になっていますから。
靄加共に堕ちようぞ奈落の果てまで。
艶紅そこ、頼むから陰険な争いしないでください。
GM
/河伯
「というわけで、よろしくお願いします」
針山他の連中が河伯としゃべっている間…俺は羅盤見て、七星剣抜いて、いちいちチェックしながらちくちくとそっちの方を見ている。
乂孑あのさあ兄ちゃん…兄ちゃんの周り、気の流れが変になってない場所ってないよねえ。
針山変なのは君の頭の中だろ。
靄加少年、人のことを言える立場ではないと思うぞ。
乂孑ねえ、ひとついい?うちの弋くんが、この頃そこの二人(と靄加・針山を指す)に向かって毛を逆立ててるんだけど…(笑)
靄加ああそれはだな…弋の方が実は既に裏返って邪仙獣と化してしまい、我々の陽気に反応して毛を逆立てているのだ。こうなったらすっぱり諦めて、息の根を止めてやるしか打つ手はないな。
乂孑なんかこのおにねえちゃん、怖いこと言ってる〜。
靄加てなわけで、今日の晩めしはイタチ鍋!…うげ、不味そう。
乂孑ええい、弋くんを親指大に小さくしてやるもん。
艶紅果たしてこの一行の間に、チームワークというものは存在してるんでしょうか?
靄加憎悪というのも絆のうちなのであるよ。愛の反対語は憎しみでなく無関心であるというやつさ。



…と 言う訳でこの続きは本誌でどうぞ。


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