TRGproとともに

(20000917 update)  

祝・日本語版発売

以下の文章は、英語版(J-OSにより日本語化)に関してのものです
日本語版とは若干異なる点もございますので、御注意ください

TRGproって?

 TRGproは、Palm OSを搭載したPDAです。TRG社より、1999年12月に発売されました。

 日本でPalm OS搭載機というと、IBMのWork Pad 日本語版が有名ですが、他にも、HandSpring社のVisorあり、もちろん本家Palm社のPalmシリーズありと、多くの機種があります。最近、本家Palm社も日本法人を作り、カラー液晶搭載のPalm IIIc 日本語版を投入するなど、日本市場を強く意識しているようです。いずれも、CPU性能やメモリ搭載量などのスペックはWindows CE搭載のパームサイズPCより低いものの、OSをはじめとするソフトの軽さにより快適な動作が実現されています。

 アメリカではPDA市場で圧倒的なシェアを誇っていますが、日本では、シャープのザウルスが優位を保っていたこともあり、注目され始めたのは最近のことのようです。

 さて、このPalmファミリに連なるものとしてTRG社から発売されたのが、TRGproです。その最大の特徴は、CFスロット(CF+ TypeII)を搭載していることです。コンパクトフラッシュはもちろん、マイクロドライブやCFモデムカードなども利用することができます。以前からPalm用の拡張・改造用ボードで定評のあるTRG社らしい、拡張性を重視した設計と言えるでしょう。

決定的だったのは

 以前からPalmシリーズは動作の軽快さで人気があり、わたしも購入を検討していたのですが、拡張性と通信環境に関しては不満がありました。特に、モバイル通信環境に関しては、携帯・PHSとの接続のために2万円近い追加投資が必要という問題があり、ザウルスやWindows CE機と比べて見劣りしていました。

 そこへ、昨年10月、このTRGproの情報が飛び込んで来ました。CFスロットを搭載するのは、Windows CE機では当たり前ですが、Palmシリーズにというのは予想外でした。TRGのサイトを見ると、マイクロドライブを差したTRGproの写真が出ていて、そこまでするか? と笑ってしまったほどです。

 コンパクトフラッシュやマイクロドライブにいくらでも情報を詰め込んで持ち歩いて見られる、それもデータビューアとして軽快さに優れるPalmで、という点に、大きな魅力を感じました。加えて、モデムカードも使えるとのこと。それならばNTTドコモのPHS 611S(CFサイズの接続カードがフリップに内蔵されているPHS)はどうなんだと思ったのはわたしだけではないでしょう。これは買うしかない、日本語化や設定はまあ何とかなるだろう、と購入を決めました。

 拡張性を高めるという点では、独自の拡張スロットを積んだVisorがありますが、一般的なCFスロットを採用したTRGproには、どこにでもある汎用のものを使えるという利点があります。容量を増やしたくなったら、好みの容量のコンパクトフラッシュを買ってきて差すだけです。デジカメ用として量産されて安くなっているので、コスト的にも有利ですね。

とりあえず買ってみる

 正式発表された時点では、近日中に予約を受け付けるという予告が流れていました。国際宅配の送料が思ったより安かったこともあって、予約開始されて間もない11月23日に、さっそく申し込みました。

 この通販予約は、今でも利用できます。ただ、申し込んでから出荷されるまでかなり時間がかかるようなので、国内で在庫のある店を見つける方が早いかも知れません。

 さて、予約はしたものの発売日を過ぎても届かず、問い合わせてみればライセンスの問題で日本には2月まで出荷できないというお詫びのメールが届き(このあたりの対応は丁寧で好感が持てます)と、待つこと3ヶ月、ようやく到着しました(「本日出荷」のメールを受け取ってから航空便で3日、速達扱いにすると2日になるようですが、$5高くなります)。ちなみに、受け取る時には、消費税を払う必要があります。関税はかからないはずだと思っていたら、意外な盲点。

 さて、気になる値段ですが、
  本体 : $329.99 US
  送料 : $19.95
  消費税 : \1,000 (関税はかからない)
で、ほぼ4万円弱。現在、国内のショップでは\39,800(税別)くらいのようなので、まあそんなものかなという感じです。他のPalmシリーズと比べると高めですが、RAMを8MB積んでいることも考えると、高くはないかなと思います。

第一印象

 当然のことながら、Palmシリーズとして普通に使えました(笑)

 動作は非常に軽快です。他の機種を使ってみたことがないのですが、どうやら、Palmシリーズの中でも現時点で一番高速な部類に入るようです。Windows CEの重さに切れそうになっていたので、反応の速さだけでも、ずいぶん快適に思えました。ちなみに、このWinCE機(カシオペア)は今や辞書付きMP3プレーヤに降格です(笑)

日本語化してみる

 日本語の入力・表示ができないのは不便なので、まずは日本語化です。山田さん製作のJ-OS IIIxを利用しました(J-OS IVでは、TRGproへの対応がより進んでいます)。5000円くらいするので、購入費用の一部として見込んでおくと良いでしょう。

 PalmOSのバージョンが3.3であり、また独自の拡張が加えられていることもあって、J-OS IIIxの場合、マニュアル通りの方法ではインストールがうまくいきません。PalmOS 3.3向けの差分ファイルを用意する必要があります(インストールしてはいけないファイルもあるので注意が必要です)。

コンパクトフラッシュの使い方

 TRGproには、コンパクトフラッシュ(CF)カードを利用するために、CFproとCFbackupというツールがインストールされています。

 CFproは、本体のRAMとCFとの間でファイルを転送するツールです。アプリケーションをインストール(PCで解凍したファイルをCFに書き込み、それをCFproでRAMに転送するだけ)したり、WAVファイルを再生(サンプリング周波数などに制限あり)することもできます。

 CFbackupは、本体のRAMの内容をまとめてCFにバックアップします。転送時間は数秒〜数十秒(使用状況によって異なる)と、シリアル転送と比べると非常に高速です。PCがなくてもバックアップが取れるので、電池切れが心配になった時や、旅先など長らくPCと接続しない時などに威力を発揮します。

 この2つ、大したものではないように見えますが、実際に使ってみると、利用スタイルを変えるほどの力を持っていると感じさせられます。わたしのように、スケジュール等の管理がPDAの中で閉じている(PCと連携しない)場合、クレードルの必要性を感じなくなるほどです(実際、もう2ヶ月もHotSyncさせていません)。ネットでダウンロードしたソフトを適当にCFに放り込んでおいて、必要に応じてインストールしたり外したりするのも簡単です。

 また、ネット上でも、CFを活用するためのツールが公開されています。中でも、CF上のテキストファイルをDOC形式(Palmで広く使われているコンパクトな文書形式)に変換してRAMに転送するCF2DOCは大変重宝しています。急ぐ時など、読みたいテキストファイルをCFにコピーしておけば、あとはTRGproだけで読むことができます(好みのDOCビューアをインストールして併用します)。

CFスロットで通信

 これまでのPalmシリーズでも、Snap Connect等のアクセサリを用いることで、パソコン通信やインターネットへの接続が可能でした。しかし、これらのアクセサリは高価だという難点がありました。他のオプションを用いず赤外線でデータ通信が可能なノキアの携帯電話(ドコモNM207,NM502i)に人気が集まったのにも、この価格が影響しているように思います。

 そんな状況の中で、TRGproとNTTドコモのPHS 611Sの組み合わせは、想像以上に強力でした。カバーを外した611SをCFスロットに差すだけで、コンパクトなネット端末になります。TRGproの液晶カバーの後ろに611Sがあってアンテナが突き出ているのは、ちょっと異様な感じもしますが、片手で持ちやすく、操作性は良好です(差したまま611Sごとたたむのは、さすがに無理でしたが)。TRGproのCFスロットは意外に頑丈で、611Sの本体を支えなくても問題なく使えています。PHSの64kモードだけあって、通信は非常に快適です。

 なお、611Sを使うためには、いくつかの設定が必要です。これには、Muchy's Palmware Review! (http://www.muchy.com/)のTRGproの紹介記事が役に立ちました(Muchyさん、SAYさんに感謝します)。

 通信時は若干TRG側の電力を消費する(特にカードからPHSを充電する設定になっていると)ようです。電池残量が少ない時に通信しようとすると、いきなり電源が切れてしまうことがあります。接続しようとした瞬間に表示が消える時は、慌てずに電池を交換してみてください(初めての時には、設定が間違っているのかと悩みました)。

 ブラウザにはPalmscape 2.0を使っています。バージョンが2.0になって、画像を表示することもできるようになりました。PHSの通信速度のおかげで、画像のロードにストレスを感じることも少なく快適です。フォームのリロード時の動作など、若干問題を感じることもありますが、良くできたブラウザだと思います。

こんな方に・・・

 ただのネット接続専用なら、ブラウザボード・コミュニケーションパル等の方が安くすみます。住所録・スケジュール管理などの機能を求めるのでも、簡単に使いたいだけなら、ザウルスの方が良いかも知れません。

 ・大量のデータを持ち歩いていつでも手軽に見られると便利
 ・PCと連携して仕事に使いたいが、Windows CEの重さはごめんだ
 ・自分だけのカスタマイズをすることに楽しみを感じる
 ・仕事用のアプリからゲームまで、1台で色々やりたい
 ・周りにPalmユーザがいるが、人の真似をするのは嫌だ
 ・どうしてもPalmを使ってみたいが、実はPCを持っていない

などという方に、特にお勧めします。

 補足ですが、本体だけで長い文章を書くのには向きません。手書きでの日本語入力は、まだザウルスに一日の長があるように思います(Windows CEとの比較だと好みが分かれそうですが)。必要に応じて、外付けキーボードを利用するのも良いかも知れません。

追補

 日本語版の発売を控え、雑誌などでTRGproが紹介されることも多くなってきました。日本語版は、OSを入れ替えただけでなく、内蔵フラッシュ容量が2→4MBになるなど改良が施されているようです。J-OSによる日本語化にはやや面倒な点もあったので、日本語版の発売によってユーザが増えることを期待しています。

 PHSですが、611Sの他に、P-in compact(CFカードサイズのPHS)も利用可能という情報がありました。電力消費は気になりますが、コンパクトで違和感がなく、差したままでも収納しやすいのは魅力です。

 あとは、音声通話ができないことが問題になるかどうかです。わたしの場合、携帯とPHSを両方持ち歩いていますが、圧倒的に音質が良いこともあって、音声通話にもPHSを多用しています。そのため、P-in compactを使おうとすると、携帯・音声用PHS・P-inと3回線契約することになり、踏み切れずにいます。PHSはデータ通信専用と割り切れる方には、P-in compactは良い選択肢かと思います。

 DDIのH゛にもCFカードサイズの端末が出てくれると、更に物欲を刺激されそうですが、望み薄でしょうか。

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